【コラム】アメリカの現職教員育成と日本の現状:Vosaicとの会話で知った課題

月に一度、アメリカのVosaicの代表者とオンラインミーティングを行なっています。
先月のミーティングで、衝撃的な事実を知らされました。

「研修機会が少ない」という退職理由

アメリカでは、多くの教員が「就職後に専門能力を高めるための研修機会が少ない」ことを理由に退職しているというのです。この問題の深刻さから、現職教員に対する専門教育の重要性が改めて注目されています。

Vosaicは、そうした状況の中で生まれたソリューションです。アメリカでは、イリノイ州立大学ゴンザガ大学ペンシルベニア州立大学など、多くの大学がVosaicを導入し、教師を目指す学生の教育に活用しています。また、テキサス州やネブラスカ州の学区のように、Vosaicを大規模に採用し、公立学校教員の授業力向上のために活用しているケースもあります。

余談ですが、日本でのVosaicの販売は「1アカウント」単位のことが多いのですが、ここに挙げた大学や学区では、100アカウント単位、多いところでは500アカウントという導入がなされていて、その点でも驚かされました。

インストラクショナル・コーチの存在

特に興味深いのは、「インストラクショナル・コーチ」の存在です。これは、教師の指導を専門とする人材で、授業のビデオを撮影し、Vosaicを使って分析することで、教師一人ひとりに合わせたフィードバックを提供しています。インストラクショナル・コーチのいない学校では、校長先生がその役割を果たしているのだそうです。

この話を聞き、日本の教育現場との違いに愕然としました。日本の教員も、より良い授業を目指して日々努力していることは間違いありませんが、アメリカのように、日々の授業力を高めることに対しての体系的な支援体制が整っているのでしょうか。

これまでに何度か、実際の学校の現場でビデオを撮影し、Vosaicを使ったフィードバックを行ってみましたが、それを見ていた学校関係者や教育委員会関係者の反応は、必ずしもポジティブなものだけではなかったと記憶しています。

私たちの果たすべき役割

なぜ、このような差が生まれてしまったのでしょうか。そして、日本の教員をどのように支援していけばよいのでしょうか。この事業に取り組んで以来、この思いが私の頭を離れることはありません。

教員の授業力向上は、子どもたちの笑顔につながり、そして長期的には教員の負担軽減と「働き方改革」にもつながると考えています。この問題に対して決して諦めることなく、Vosaicのような優れた教師教育のツールを日本にも広め、すべての教員が安心して教えられる環境を作ることが、私たちの使命だという思いを新たにしています。

(橘 肇/橘図書教材)

アイキャッチ画像:写真AC