【コラム】英国と日本の大学の違いと、スポーツパフォーマンス分析

その事実に気づいたのは、今回の口頭発表の日(3月6日)まであと10日ほどになり、そろそろ話のまとめを考えなければと感じていた頃でした。

インターネットで探し当てた資料(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構「英国の高等教育・質保証システムの概要(第3版)」)には、英国には大学が140校ほどしかなく、Undergraduate(学部)は3年制であること、そして140校の中の少なくない数の大学が、1992年の法律によって高等職業訓練校から「大学」に移行したものだと書かれていたのです。もちろん制度の違いはありますが、日本の大学の数はこの6倍近く、800校以上と言われます。

(2枚目以降の写真は学会大会サイトより。報告書などへの使用は許諾されています)

実践の中で感じた疑問

今回の研究の調査対象は、英国の大学におけるスポーツパフォーマンス分析の授業(モジュール)です。このテーマに興味を持った理由は以前にも申し上げていますが、私も翻訳に携わった書籍「スポーツパフォーマンス分析入門」にあります。

私が大学2年生の授業を担当することになった時、英国のレベル5(大学2年次)の学生のために執筆されたというこの書籍を授業計画の参考にしました。しかし3年間の授業実践を経て、これは本当に大学2年生を対象に執筆されたものなのか、英国では実際にこの内容で授業を実施できているのだろうか、できているのなら何故だろうかという疑問が湧いてきたのです。

学生の資質ということであれば、特に国による違いはないはずです。もしかしたら、この授業に入る以前の学習量、それはスポーツパフォーマンス分析の知識のみならず、PC操作や初歩の統計学の予備知識などにも違いがあるのではと感じていたところでした。

違いを知った上で

今回の発表のための調査を行う中で、英国の大学には「教養やPCスキルは高校で終え、大学では即座に専門教育を行う」という特徴があることも分かりました。また、今回の調査対象には(オックスフォード大学やケンブリッジ大学に代表される)主要な国立の研究型大学が含まれておらず、多くのコースがスポーツ産業の即戦力養成を目的としていることも見えてきました。 これらの背景が、当該書籍の内容が大学2年次という早い段階で学習可能なレベルとして設定されている理由ではないかと感じられたのです。

こうしたことを知ることが、どこまで私の本業である商品販売に繋がるかは分かりません。しかしパフォーマンス分析の商品を販売しようとする自分が、それが生まれた環境、そしてそれを普及させようとしている対象、環境を知ることは決して無駄ではないはずです。自分のオリジナリティとも言える、この「営業と教育の二足の草鞋」で今後も歩んでいきたいと思います。

この発表のきっかけとなる授業の機会を与えてくださり、また発表に関してご助言をくださった関係者の方々に、心からの感謝を申し上げます。これをきっかけに、同じ問題意識をお持ちの方とのコミュニケーションが生まれれば幸いに思います。

(橘 肇/橘図書教材)