先日購入したVHSデッキを使って昔のビデオをファイル化しつつ、その頃の試合のスコアブックを引っ張り出して眺めています。当時のチームのスコアブックからコピーして、保管していたものです。
私自身がスコアブックの記入法を覚えたのは、中学校の頃じゃなかったかと思います。当時は試合中、ベンチの中で一人下を向いてスコアブックをつけているのが何となく気恥ずかしかった覚えがありますが、後年、スポーツのデータ分析に関わる仕事に20年以上携わることになるわけですから、何がどこでどう繋がるかわかりません。
スティーブ・ジョブス氏の有名な講演の中の「connecting the dots(点と点をつなぐ)」というのは好きなフレーズですが、今やっている「点」がどこかで線に繋がるといつも信じていたいものです。
さて、そのスコアブックを眺めているうち、
「あれ、これって『スポーツパフォーマンス分析入門』で言うところの『手作業の記述分析』そのものじゃない?」と思ったのです。
ちょうど次回の「スポーツパフォーマンス分析への招待」のテーマを『手作業の記述分析』に決めたところだったのですが、例として何を使うか、決めかねていました。長いことラグビーやサッカー、バスケットなどに関わっていたせいか、自分の出自を忘れていました。野球の神様に怒られそうです。
そこで野球のスコアブックについて調べてみたところ、驚いたことにスコアブックの記入方法には「早稲田式」と「慶應式」の2種類があると!
(出典:日本野球機構ウェブサイト【記録員コラム】スコアブックを語る~温故知新~)。
それによると「早稲田式」が一般に普及している記録法、一方「慶應式」はNPBの公式記録として採用されている記録法だそうです(具体的にはリンク先記事を。多少なりと「記録」に関わる者にとって、厳粛な気持ちになる記事でした)。上に示した私のチームのスコアブックの用紙はもちろん「早稲田式」ですが、記入の仕方は早稲田式とも少し違っているようです。大学の中で伝わってきたものか、所属する地区の野球連盟の中でアレンジが加えられたものなのかもしれませんね。
いずれの方法にせよ、手作業、つまり紙とペンだけで記録した数字と記号の羅列によって、ビデオを見なくとも試合の流れを再現でき、個人記録にチーム記録もまとめることができます。野球という競技の特性もありますが、改めてよくできたものだと思いました。
スポーツパフォーマンス分析の世界の進化は早く、常に最先端のテクノロジーをフォローしないといけないのですが、もう一度「そもそも、分析の目的は?」ということを見つめたいと思ったのが、次回のテーマ選定の理由です。
うまくまとめきれたかどうかはわかりませんが、6月10日発売の月刊トレーニング・ジャーナル7月号に掲載の予定です。
(橘 肇/橘図書教材)