【コラム】なぜ立ち幅跳び?

今年のチャレンジの1つとして、自分の得意ではない分野や手法も、授業の中で取り上げることにしています。

その1つが「動作分析」です。

私自身、専門的にバイオメカニクスを学んだことはありませんが、書籍「スポーツパフォーマンス分析入門」の記述を頼りに、簡単な動作観察の回をシラバスの中に入れました。スポーツパフォーマンス分析の幅広い知識を知ってもらいたい、そしてゲームパフォーマンス分析で発見した結果を見るときの見方を広げてほしい、そんな狙いです。

観察に使う動作は技術的にできるだけシンプルなものが良いと思い、別の大学で担当している測定評価学でも取り上げた「立ち幅跳び」にしました。いま小中学校で行われている「新体力テスト」の1種目ですし、学生たちも体験しているんじゃないかと思います。

まずは説明のための映像が必要なので、近所の公園へ。

家族連れがや子供たちがいなくなった瞬間を見計らい、画面上で距離の目安にするための目印を置き、誰かがやってくる前に急いで…。


距離もフォームも…コロナ禍の運動不足でやむを得ず、と言っておきましょう。
まあこの方が、学生自身のジャンプと比較させるのにはちょうどいいか。

実際の授業では、次の3段階のステップで観察を行わせました。

わずか2コマの中ですが、スポーツパフォーマンス分析入門に書かれている「動きの質的診断」の4つのフェイズ、「準備」「観察」「評価と診断」「介入」を、模擬的に体験させたいと思いました。

今年また非常勤講師をすることになり、心に留めていること、それは「授業は自分の持っている知識を学生に教えることじゃない。」ということです。自分の知識と経験を使うだけだと、パフォーマンス分析や測定評価学の専門的な知識の乏しい自分では、15回や30回など持つはずもありません。

前の日に詰め込んだ新しい知識をもっともらしく喋っているときは「これでいいのかな?」と思うこともありますが、毎回新しい知識を学びながら、授業中の対話を通じて学生たちの考えを引き出しながら、私自身も成長していくサイクルが作れたらと思っています。

(橘 肇/橘図書教材)

参考:「スポーツパフォーマンス分析入門」(大修館書店)pp.24-33