【コラム】伝えることの難しさ – 前後期の授業を終えて –

非常勤講師としての授業が、昨年12月22日に終了しました。

大学で、しかも前後期それぞれ2科目、14回ずつという数の授業を担当するのは初めての経験でした。今まで仕事を通じてたくさんの大学の先生方とお付き合いをしてきましたが、教えるということの責任と大変さをほんの「少しだけ」ですが、経験できたかなと思っています。それだけでも私の今後にとって、貴重な9ヶ月間でした。

授業の始まる前の3月、授業の内容や授業に臨む姿勢についていろいろな先生方に相談をしました。ある先生が、教育経験のないことを不安がる私にこんなメッセージをくださいました。

「授業は、知識や技能を伝えるだけでなく、情熱が伝わらなければ効果が上がりません。この1年、橘さんのスポーツパフォーマンス分析に対する熱い気持ちを発露させて学生と付き合って行って下さい。」

この言葉を支えに、とにかく準備においても進行においても「手抜きはしない」ことを心がけました。振り返ってみて、それだけは守れたかなと思います。しかしそれはあくまで私の自己満足。当然のことですが、大事なのは学生にとってどうだったのか、ということでなくてはなりません。学生からのアンケート結果もあるようですので、それに真摯に向き合いたいと思います。

授業ではほぼ毎回、授業内容の振り返りのために記述式の小テストを出題しました(実際に出題した課題はトレーニング・ジャーナル2021年10月号に掲載)。採点の簡単な選択式でなく、記述式とした第1の理由は、授業内容をしっかり再確認し、自分なりの考えをまとめてもらいたいということにあります。そしてもう1つ、対面授業の機会が少ない状況の中で、非常勤の私が学生1人1人のことを少しでも把握するには、文章で記述された回答を読むことが1つの方法だと思ったからです。

毎週、2つの科目を合わせた130名余りの回答を読む中には、私の出題の意図や、回答の方法の指定が曖昧なために迷わせてしまったと感じる回答がありました。そうした1つ1つの回答が、私が講義で伝えたかったことが正確に伝わっているのか、伝えるためには教え方をどう工夫するべきか、それを知るための貴重な手がかりになりました。受講してくれた学生、1人1人に感謝したい気持ちです。

(橘 肇/橘図書教材)