今から20年前、私がこの業界での販売の仕事を始めた頃、スポーツチームのコーチやスポーツ科学の研究者の方に会って「ビデオ分析ソフト」の説明を始めようとすると、「動作分析のソフトですね?」と言われることがよくありました。
「ゲーム分析」(記述的ゲームパフォーマンス分析)という言葉を知らなかった当時の私は、その手法や、それを行うソフトを何という言葉で言い表せばいいのか、ずいぶんと頭を悩ませたものです。この頃はまだ、スポーツのパフォーマンス分析(この言葉自体、一般的ではなかったように思います)と言えば、「ゲーム分析」よりも「動作分析」の方が主流だったのではないかと思います。
当時私が所属していた会社も、動作分析システムの販売、また動作分析の結果を用いたアスリートのパフォーマンス向上の支援を行っていました。私自身も、トップレベルのアスリート(覚えているだけで野球、社交ダンス、ゴルフ、自転車競技、スケルトンなど)や、一般の方の歩行といった動作の実際のパフォーマンスの映像を収録し、そこからさまざまな定量的な分析を行う機会が数多くありました。
動作を生で観察するだけではわからない、力の伝達の様子や動作の特徴、改善すべき点などが、数値やグラフの中に現れてくるのは新鮮な驚きでした。またそのデータを活用して、トレーナーやコーチが選手に行うフォーム改善のアドバイスを支援できる、その点でも非常にやりがいのある仕事でした(そうしたデータを読み解き、活用していた当時の会社のトレーナーたちはすごかったと思います)。
そのうちにゲームパフォーマンス分析ソフトの販売が忙しくなってくると、自然と動作分析の仕事からは離れていくことになりました。しかし、指導者と競技者が一緒にデータを見てパフォーマンスの改善の糸口を見つけていこうという取り組みは当時の私に非常に新鮮に映り、スポーツ科学の可能性を感じさせてくれるものでした。
次回の連載で「動作分析」のことを書こうと考えているうち、そんなことを思い出していました。もちろん当時もそれ以前も、ゲームの中で起きるパフォーマンスを研究している方や、ゲーム分析を行っている方はいらっしゃいました。「パフォーマンス分析」や「アナリスト」という言葉が広まっていなかっただけで、そうした分野で業績を残しておられる方はたくさんいます。
そうした先達の方々のことを忘れず、今後も販売と並行して、取材や教育活動を行なっていくことができたら、と思っています。
(橘 肇/橘図書教材)