【コラム】新鮮な驚きを、いつの日も。

今の時代にプレーヤーだったら…

月刊トレーニング・ジャーナル5月号(4月10日発売)の連載では、動作解析や球質測定によるデータをもとに、専門家がパフォーマンスの向上・改善をサポートする民間施設を取材しました。日米の野球界でいま注目を集めている、最新機材のデータをもとにした「プレーヤーディベロップメント」に関するレポートです。

こうして、少し前では考えられなかった量や質のデータが、プロばかりでなく高校や大学のレベルでも手に入るようになっている現実を見るにつけ、「自分が今の時代に選手としてプレーできていたら」と思っている人は少なくないのではないでしょうか。レベルはどうあれ、もちろん私もその1人です。

35年前の「宝物」

そんなことを考えながら、久しぶりに箱の中から「宝物」を取り出してみました。

古ぼけて印刷がだいぶ薄くなっていますが、ピッチングフォームの連続写真です。
今から30数年前の大学時代、硬式野球部の当時の監督であり、スポーツ医科学の研究者でいらっしゃった故田口貞善先生が、研究室の機材で部員たちのピッチング、バッティングのフォームを撮影してくれたものです。確か、撮影したその場でもうプリンタから出てきた記憶があります。

高校時代まで、こうした「連続分解写真」は野球関係の雑誌でしか見たことがありませんでした。それが私のピッチングフォームで、しかも撮影してすぐにできあがっていることへの新鮮な驚きは、今も忘れられません。連続写真で見ると自分のフォームもなかなか悪くないような、そんな錯覚がしたものでした。

腕のバックスイングは大きい方がいいと盲目的に信じていた当時の自分に、30年後には「ショートアーム」という考え方が広まっていることを教えてあげたいです。

小さな驚きを伝えたい

翻訳に携わらせていただいた「スポーツパフォーマンス分析入門」でも、質的なデータのひとつとして「写真」が取り上げられています。大学時代にこうしたテクノロジーに触れる機会をいただいたことが、もしかしたら今の仕事にも繋がっているのかもしれません。きちんとお礼を申し上げることができなかったのが今も心残りですが、先生には改めて感謝を申し上げたいです。

テクノロジーも、そしてスポーツの技術に対する考え方も、どんどん進化し変わっていきますが、変わらないであろうもの ーー 「新鮮な驚き」に出会った時の嬉しさを学生が見つけられるよう、手伝うことができたらと思っています。

(橘 肇/橘図書教材)