連載『スポーツパフォーマンス分析への招待』第8回が掲載予定の、月刊トレーニング・ジャーナル(ブックハウス・エイチディ)8月号は今月10日の発売予定です。
前回の「質的分析と量的分析」では、野球のスコアブックと配球表、つまり「手作業による記述分析」のデータを例にとり、『スポーツパフォーマンス分析入門』で示されている4つの視点*からデータの種類について考察しました。
中でも、特に私が認識を新たにしたのは「質的データの量的分析」、つまり「アナリストである自分の『主観的な判断』を交えて入力した球種やコースといったデータ、そこから得られる情報は、果たして十分な客観性を持っていると言えるのか?」ということでした。
ともすれば、数字を用いた定量的なデータ分析は一義的に「客観的なもの」と自分が考えていたこと、また専用ソフトウェアを使っていると余計にそう思いがちであったことを、戒められたようにも感じました。
さまざまなテクノロジーの発達によって収集できるデータの量が飛躍的に増加し、量的なゲームパフォーマンス分析が複雑化している今、質的・主観的な分析の価値も問い直してみたいと思っています。
さて、今回のテーマは「手作業による記述分析」に関する考察です。コンピュータ化されたシステムがトップレベルのチームに広く普及してきた今だからこそ、この手作業による記述分析から何が得られるのか、関係の方のインタビューを交えて書きました。ぜひ、お読みくださればと思います。
参考文献
*オドノヒュー:中川昭監訳,橘肇・長谷川悦示訳(2020)スポーツパフォーマンス分析入門――基礎となる理論と技法を学ぶ,大修館書店,pp.24-48.
(橘 肇/橘図書教材)