11月29日、東邦大学理学部様(習志野キャンパス)にて「スポーツ・健康科学」の講義を担当させていただきました。3年連続でご依頼をいただいているこの講義は、2回に渡ってスポーツ情報分析、映像分析についてお話をさせていただいています。
毎年天気に恵まれるこの授業の日、今年も朝日に輝くモニュメントを見ながら入構できました。
理論と演習をミックスした講義を
今年は非常勤講師としてスポーツパフォーマンス分析を通年で担当していることもあり、授業のために考えたリソースが格段に増えました。もちろん、常に試行錯誤の連続で、「これは他の大学の授業でも使えるぞ」と思うこともあれば、「もっと工夫しないと」と思うことも多々あります。今回の授業では、そうした新しい要素の中からいくつか取り入れてみることにしました。
2回の授業の進行予定です。
今年は昨年の倍近い、約40人の学生が受講しています。授業時間も今年度から100分になったということで、少し余裕のある構成にすることができました。Vosaicを使ったゲームパフォーマンス分析の演習は私の授業の大きなポイントですが、前提として、「スポーツパフォーマンス分析入門」と「スポーツパフォーマンス分析への招待」に基づいたスポーツパフォーマンス分析の理論もしっかり伝えることにしています。
「大学の授業」としてどうあるべきかを常に考えつつ、半期なり通年なり、スポーツパフォーマンス分析の教育の型を早く確立することが、今の私の目標です。
40人での演習を行うためのコツ
1回目の授業では、スポーツパフォーマンス分析の方法と目的を中心に解説をした上で、分析方法を体験する演習に取り組んでもらいました。
Vosaicを使った演習では、あらかじめ作成しておいたアカウントで、40人全員にログインしてもらいます。毎回、アカウントやパスワードを伝えるところで伝達ミスが出てしまうので、前もって伝えておくような工夫が必要だなと感じました。
多人数の演習授業の進行についてのマニュアルをVosaicのサイトにお作りしています。「ビデオ分析を授業に採用するには、人数分のライセンスのコストがかかる」「操作の説明がたいへん」と思われている先生方には、ぜひご参照の上、ビデオ分析を授業や研究の中に採用していただけたらと思います。
テクノロジーの利用の際に考えるべきこと
全員がログインできれば、あとは用意したビデオとフォーム(ボタン)を使ってマークアップ(データの入力)を行います。テニスのゲームを題材に、練習として1ゲーム(どちらかが4ポイントを獲得するまで)のマークアップと、40人全員で1試合のマークアップに取り組む課題の2つに取り組んでもらいました。
上の画面は、5セットまでの試合を1ゲームずつ分担してマークアップを行ったタイムラインです。1試合を1人で分析しようとすると3時間かかるところ、これなら10分程度で終わることができ、傾向を出すことができます。もちろん「これでよし」とするわけではなく、こうして手分けして分析を行う際には何が問題となるか、その問題をできるだけ解消するにはどういう方法が考えられるか、それを考えるところにこの演習のポイントを置いています。
漠然とした「操作体験」で終わらないために
12月13日の2回目の講義では、まず、前回全員で手分けして入力したテニス1試合のデータをCSVでエクスポートし、Excelで集計したものを確認するところから始めました。Excelのシートにフォーマットを作っておき、2枚目のシートにCSVファイルを貼り付けると自動的に表とグラフが表示されるようにしています。
この表で、100%以上の成功率が表示されているのは「おかしい」のですが、それを元に、1つのポイントの中に情報がダブって入力されている可能性があることなど、多人数での作業分担の際に注意すべきことなどを考えてもらいます。
この表から、ファーストサービスのパフォーマンスに注目してもらうとともに、スポーツパフォーマンス分析を行う上でまず考えなくてはいけない「パフォーマンス指標」と「アクション変数」について説明を加えました。
その後、私がVosaicに用意していたスポーツの試合映像の中から1つを選択してもらい、次の手順で試合分析の演習にかかりました。
- スポーツを1つ選択する(ゴール型、ネット型、ベースボール型を数競技ずつ用意)
- パフォーマンス指標を1つ考える
- そのパフォーマンス指標を算出するためのアクション変数を考える
- アクション変数をVosaicのフォーム(ボタンとタグ)として作成する
- マークアップを行い、ダウンロードしたCSVファイルを使ってパフォーマンス指標を計算する
- パフォーマンス指標を計算したExcelファイルを提出する
授業の1コマという貴重な時間を与えていただいている以上、学生にとって、データの収集や加工について考えるきっかけに、またスポーツに違う角度から興味を持ってもらうきっかけになればと思います。こうした機会をくださる先生方には、心から感謝を申し上げます。
(橘 肇/橘図書教材)