最初に仕事を教わった環境の中で学んだ習慣は、ずっと残っているものだと感じることがよくあります。
毎月の「月刊トレーニング・ジャーナル」の連載のようなちょっと長めの文章を書く際、話の材料(ネタ)がある程度揃ってきたところで構成を考え始めるのですが、そのときに使うのが、番組制作の仕事をしていた頃に教わった作業です。
とりあえず入れたい、入れられそうな要素を付箋に全部書き出してみます。それを壁や机の上に貼り、並べ替えて話の流れを考えたり、余分な話や流れは抜いたりしているうち、個々の要素の繋がりができてきたり、繋がりの上で足りないところが見えてきたりします。
確か当時「ペタペタ」(だったかな?)と呼ばれてた作業なので、自分は今も「ペタペタやるか。」と独り言を言って始めています(前にいた会社では1人でやってましたから、ずっと独り言です)。
文章構成だけでなく、営業のプレゼンの流れを考えるとき、カンファレンスのタイムスケジュールや出し物を考えるとき等々、気がつけば30年近くずっと使っています。パソコン上でやればもっと効率がいいんでしょうが、基本的に最初の段階はこれです。段落ごとにある程度文章ができてきたら、KeynoteやWordの上で並び替えています。
当時、構成やコメントについてとても多くのことを教わった先輩がお書きになった書籍から、この作業に関する箇所を引用させていただきます。
「ディレクターは全シークエンス(個々のシーンが集まって構成された「場面」)を「ポスト・イット・メモ」に書き出し、それらをボードに貼って番組全体の構成を検討するのが常である。ディレクターと編集マンは、シークエンスのメモを前へ持っていったり後ろへ移動させたり、あるいははずしたりして、番組全体が流れていくように議論を重ねるのである。」
『ドキュメンタリーとは何かーーテレビ・ディレクターの仕事』(河村雅隆,ブロンズ新社)
(河村さん、お名前の正しい字が出せなくてすみません)
この作業をする際、いつもこの箇所を思い出します。この引用にあるように、実際はこの方法、本来は人と議論しながら進めないとアイディアが広がりません。今は1人での仕事が多いので、ペタペタをしてもアイディアは限られてしまいます。そんな時に編集者の方とメールや電話で話したり、また直接会った時に意見交換をすると、自分の気づかなかった新しい展開や、同じ話題に対しての違った捉え方が見えてくるので助かります。
(橘 肇/橘図書教材)