【コラム】その「手間」から得られるものは

現在書かせていただいている連載記事を大きく分けると、私の経験や見聞きしたことを中心に書くときと、インタビューを軸にして書くときがあります。しかし毎回少しでも工夫して、構成やスタイルを変えて書くように心がけています。読者の方が飽きないように、そして駆け出しライターとしては、様々な文体にチャレンジすることも必要だと思っているからです。

全文の文字起こし

インタビュー記事を選んだ場合は、まず、録音した音声を文字に起こすのが毎回のルーティンです。この文字起こし、私は基本的に全文を書き出すようにしています。正確には「ええと」や「はい」といった内容に関係のない語句は省略しますが、それ以外はできるだけ正確に書き起こします。

この習慣はTVの仕事をしていた時もそうでした。インタビューを収録したβカムテープを再生、停止しながら手書きでノートに書き出していると、同僚や先輩のディレクターから「すごいね!全部書いてるの?」とよく言われたので、全員がやっていたわけではないようです。

ただ、6年でドロップアウトした落第ディレクターとしては、「折角録ってきたインタビューだから、とにかく一番いい言葉を使いたい」と思うと、一言も逃さないように書き出さないと安心できなかったという話です。

便利なサービスは数あれど

それから25年、鮭は生まれた川に帰ると言うか、再び取材の仕事もするようになりました。もうちょっと要領よくなっていても良さそうなものですが、人間そうは変わらないようです。記事に使うポイントだけを箇条書きで書き出せば十分な気もするのですが、その踏ん切りがつかず、やはり一言も漏らさず書き出さないと安心できません。正確に計ったことはないですが、60分のインタビューでだいたい10時間くらいかけているような感じで、集中できる夜や週末の作業になっています。

人によってはインタビュー中のメモから原稿を書き、細かい確認が必要なところだけを再度聞いて補うとも聞きますし、業務としての文字起こし・テープ起こしを行う会社もありますので、急ぎで大量の原稿をこなす出版社などはそうしたサービスを使うようです。これは人それぞれのスタイルがあったり、時間の制約の中での作業ですから、一概にどの方法がいいとも言えません。

「この一言」を取り出すには

それでも自分の場合はやはり、取材相手の話の細かいニュアンスや「これ」といった一言を掘り出すには、再度すべて聞き直すしかないと今は思っています(罷り間違って超多忙な売れっ子ライターでもになれば…わかりませんが)。最近は相手の言葉に集中するため、あえてほとんどメモも取りません(取れません)ので、その点でも完全に聞き直す必要があります。

そうやって夜、静かな中で聞き直しているとき、キーボードを打つ手がしばらく止まるほどの印象的な言葉が出てきた瞬間は、何とも言えない嬉しさがあります。そういう語り手の知恵や思いの表れた言葉を一つでも多く拾い上げ、読者の人に伝えたいと思う瞬間は、慣れない執筆に向かいあう原動力でもあります。
読者の皆様にも、今後もお付き合いいただければと思います。

その「手間」から得られるもの

そんな作業の中で思い出したのが、「スポーツパフォーマンス分析への招待」で取り上げた、ゲームパフォーマンス分析のデータの収集方法です。PCソフトを使うか使わないかに関わらず、現在では分析者による判断と、「手作業」による入力が主流だという話をしました。昨今、「データ作成・提供サービス」の会社も増え、またデータの自動収集に向けた開発が進む中、はたして分析者が入力の手間をかけることに意味があるのか、ないのかという点は今の大きな議論の一つです。

もちろん、番組づくりや執筆と同様に、スポーツの分析にとっても時間、そして人のリソースという要素は絶対に無視できません。データの収集・解釈・フィードバックという各段階のどこに限られた時間と労力を割くべきなのか、新米ライターとしても、商品・サービスのプロバイダとしても、しっかりと見据えていきたいと思っています。

で、本題です(笑)

最後にここからが本題、自社商品の宣伝です。最近は自分でタイプする前に、Vosaicのトランスクリプション(文字起こし)機能を使うおかげで、この時間が随分短縮できています。今ちょうど文字起こしをしている次回連載用のインタビューは、音が少し小さかったにも関わらず、そのままでも十分理解でき、聞き直して修正する時間もだいぶ短縮できました。発話分析のような研究にも十分使っていただけそうです。

(例:トランスクリプション+字幕機能をONにしているところ。
「あの」が多いのは改善すべき点ですが、こうして視覚化するとよくわかりますね。)

お問い合わせ、ご試用のお申し込みは、ぜひこちらから。

(橘 肇/橘図書教材)