多くの体育系大学で体育科教員養成の教科書として使われている書籍「体育科教育学入門」(大修館書店)によれば、「専門職としての教師には、(中略)授業という複雑な問題状況に身をおき、経験から形成した知識を用いて指導実践を省察(reflection)し、授業を創り出していく「反省的実践家」(reflective practitioner)として成長することが強く求められるようになってきた(Tinning, 2006)」と記されています。(p.257)
教師の専門能力を開発する上で重要な役割を果たすのが「反省的思考」(省察)です。それは「良い指導とはどのようなものか」を、教師自身がより深く理解することに繋がります。
Vosaicのブログの中で「実践の中の省察」(reflection in practice)と「実践についての省察」(reflection on practice)の違いについて述べられています。
「実践の中の省察」(reflection in practice):授業の中で起きる事象に対して思考すること。
「実践についての省察」(reflection on practice):授業後に、何がうまくいって何がうまくいかなかったかを思い出して評価すること。
どちらの省察についても、人の能力や記憶に頼る方法では限界があると私は考えています。まず「実践の中の省察」では、教師が授業中のすべての出来事を把握する必要があります。例えば1人の生徒に集中してサポートしている時、それ以外の生徒の行動を把握できていないことがあるかもしれません。
また「実践についての省察」の場合は、授業が終わったあと、その授業の細部を思い出す必要があります。しかしこれは実際には困難なことで、思い出せることは大枠のことや特に目立ったことに限られ、省察に必要な細部の情報の大部分は失われてしまいます。
こうした「行為の中の省察」と「行為についての省察」の両面において、ビデオの活用による振り返りは一つの方法ではないでしょうか。自分の授業の模様をビデオで見返すことはちょっと抵抗感があるかもしれませんが(私とても、自分の講演や授業の模様を見返すのは抵抗があります)、省察のプロセスを工夫することで、修正すべき点にフォーカスして客観的に振り返りができるようになるはずです。もちろん教員養成課程での模擬授業についても、これは有効だと思います。
そんなご提案をしていきたいと思っています。
<参考>
vosaic.com Blog「How to Improve Teachers’ Self-Reflection Practice」
(橘 肇/橘図書教材)
[ Provided by Vosaic ]
*このコラムは橘図書教材の取り扱い製品「Vosaic」のサイト(vosaic.jp)と連動した記事です。
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