【コラム】研究授業の振り返りを効果的に行うには


この記事はvosaic.comの記事「Deliver Feedback That Will Actually Develop Teacher Skills」を参考に、日本国内の事情等に合わせて書いたものです。


私自身、これまで小学校や中学校での「研究授業」(授業のあり方を研究するため、教師、教生、研究者などに公開で実施される授業)1)を数多く見学させていただきました。私の見学した研究授業では、主に若手の先生が行う授業を、学校あるいは学年の先生全員で見学し、授業後の研究会においてフィードバックが行われていました。

今回はこの研究授業の振り返り(フィードバック)を効果的に行う方法について、vosaic.comの記事と、私がこれまで見学してきた研究授業の様子を参考に考察してみたいと思います。

1) 出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

まず何よりも必要なことが、振り返りの内容の明確さです。もし授業後の研究会において、観察者の先生方からの講評の内容が整理されていない、タイミングや統一感がなさそうだと感じたら、振り返りの方法を再考する必要があるかもしれません。

研究授業や授業観察の振り返りがうまく機能するには、それが具体的で、かつ事実に基づいていることが必要になります。記事内では質の高い振り返りの条件として、4つの条件を挙げています。これに基づけば、授業を行った先生は自身のスキルの現在地を知ることができ、自己省察がより促進されます。

1. 具体的であること

観察する側とされる側、全員が同じ考えを持つためには、優先順位の高い「診断項目」「評価項目」を含んだリスト、「診断票」を作成すべきです。まずこれを作ることで、そこに関わる全員が共通理解を得ることができます。

2. 先行研究のエビデンスに基づいていること

1.にあげた診断票は学校独自に作ることもできますし、利用できる多くの先行事例もあります。例えば体育科教育の「期間記録・相互作用」2)や医療コミュニケーションの「TeamSTEPPS」3)といった診断項目はその優れた例でしょう。授業観察のための診断項目を詳細に記した書籍4)も出版されています。

2) 新版 体育科教育学入門(2015, 大修館書店)pp.260-261
3) 実践シミュレーション教育(2014, メディカルサイエンスインターナショナル)pp.168-175
4) 教師が変わる・児童生徒も変わる 授業づくりの診断書(2020, ハガツサブックス)

体育科教育の授業分析(期間記録・相互作用)のVosaicのフォームの例
医療コミュニケーションの分析(TeamSTEPPS)のVosaicのフォームの例

3. 適時に行われること

もちろん研究会は研究授業の直後に行われるのが通例ですが、それでも準備に数時間がかかった後の開催となると、授業時に感じた「実感」が薄れていることは否めないでしょう。スポーツにおいても、「サッカーのコーチの記憶は決定的に重要な問題の45%以下」5)という研究結果があるくらいです。できるだけ早く、しかもエビデンスを示しながらの振り返りが効果的です。

5) オドノヒュー:中川昭監訳,橘肇・長谷川悦示訳(2020)スポーツパフォーマンス分析入門 ── 基礎となる理論と技法を学ぶ,大修館書店 p.10.

4. 個人ごとの目標に対応できていること

模擬授業や研究授業を行った先生全員に対して、同じ方法で振り返りを行うだけでは不足しています。自己省察や成長を促すためには、観察、診断したことについてのコメントと、それに対する授業者側の返信を受け取れることができる仕組み、相互に意見交換できる仕組みが必要です。

こうした授業観察の課題を整理し、頻繁かつタイムリーなフィードバックを行うための一つの方法が、ビデオ分析による「客観的・量的な振り返り」と診断者による「主観的・質的な振り返り」を組み合わせた、バランスの取れた振り返りの仕組みです。

私が見学してきた研究授業や指導者研修の多くが、ビデオや、授業分析専用のビデオ分析ソフトを活用して、タイムリーで具体的な振り返りを行なっています。関係者全員の間で共通の理解を生み出し、指導者の成長につながる振り返りのシステムが広がっていくことを願って、私自身も営業に努めます。

(橘 肇/橘図書教材)

アイキャッチ画像:写真AC


授業分析と教師の成長支援のために開発されたビデオ分析ソフトウェア「Vosaic」(ヴォザイク)については、こちらのウェブサイトもぜひご参照ください。